「き、嫌いなんです。甘いもの。昔から!

ごめんなさい!!」


走っていく彼女を
ただ呆然と見つめた。





「…かっこわりー…。」

何が、守る、だ。
何が、幸せにする、だ。

とんだ勘違い野郎だよ。


視界にも入ってない俺が、
チカにとって特別なわけないじゃないか。

俺は、
クッキーを見つめて、
奥歯を強く噛んだ。




ぱしんっ。

「ふぇ?」

後頭部を軽く叩かれた。


後ろを振り返ると店長だった。



「今、大変なのは誰だ?」

静かにそう言われて、
はっとした。


「落ち込むのは後だ。
守るって決めたんだろう?」

真剣な店長の目に、
俺は背筋を伸ばした。

また、やってしまった。


心なんて折れてる場合じゃない!


チカが俺を思い出せなくても、
俺を好きじゃなくてもいい。

俺がチカを好きなんだ。