騒がしかった教室が一気に静かになり、俺の声だけが響く。
「本当に、3ヶ月間ありがとうございました。
ここで学べたことは決して無駄にはしません。
そして、俺をここまで導いてくれたのが、篠葵です。」
葵は俺が話している間、俯いていたが、顔を上げた。
そう、ちゃんと見てて。
「日誌を書くのも、パシられるのも、ちゃんと掃除をしたのも初めてでした。
文化祭に参加したのだって、初めてだった。
全部楽しめたのは…。
葵が俺を必要としてくれたから。
葵のおかげでこのクラスにも溶け込むことができました。
こんなこと言うのもなんだけど、俺、このクラスに来る前は、自分の”俳優”というスペックに溺れていたと思います。
でも本当にこのクラスにきて、葵と出会って、自分の内面を知ってもらうことを嬉しいと思って、自分に酔ってる自分が嫌になった。
今、みんなの目に映っている瀬田祐樹こそが本当の及川蓮です。
違いなんてありません。」
なに泣きそうな顔してんだよ。
自分の愛しい子がうるうるした目で俺を見ている。
そんな目で見ないでよ。
そうして俺は葵に手を差し伸べる。
「おいで、葵。」
まぁ素直じゃない葵はすんなりと手を伸ばしてはくれず、おずおずとゆっくり手を差し出してくる。
その手が俺の手を掴む前に俺は葵の手を握って自分に引き寄せた。

