みんなが樫月くんの私への発言に大きく同意し、和気藹々と笑で溢れている時だった。
「あーあ、まさかこんなことされるなんて夢にも思わなかった…。」
「え?」
小声で、目の前にいた私にしか聞こえないような声だったけど、それは瀬田の発言ではなく、確実に蓮の発言だった。
蓮?
「葵、本当にありがとう。本当に大好きだ」
「っ………」
眼鏡越しからでもわかる蓮の笑顔。
瀬田じゃない。蓮が目の前にいる…どうして…。
「あーあ、こんなサプライズ、聞いてないんだけど」
蓮が今度はクラス中に聞こえる声で言う。
クラス中が静まる。
周りからは、え?、という疑問の声が浮かぶ。
瀬田なの?などという声も上がる。
みんなが疑問に思うのも当たり前。
声が、瀬田の声じゃない。
蓮はいつも学校では声を変えるようにしているのに、今の声は蓮の声だった。
「3ヶ月間ありがとうございました。
まさかこうしてクラスに馴染めるなんて思ってなかったから思いもしなかったんだけど、昨日決めました。」
みんなが静かに瀬田の声を待つ。
もちろん私も。
「こうして俺のことを大事に思ってくれるクラスメイトに嘘をついたままさよならするのもいたたまれなかったので。」
そうして瀬田は私たちから受け取った花束とアルバムを器用に片手で持ち、頭とメガネに手を伸ばす。
まさか……。
「俺の名前は瀬田祐樹じゃなくて……、及川蓮です」
そしてカツラとメガネを外したのだった。

