葵はそう言って俺の手を払いのけた。
「あっ………ごめんなさいっ……」
そう言って駆け出して行ってしまう葵。
俺は行き場をなくした手を見つめることしかできなかった。
葵……泣いてたのか?
一瞬しか見えなかった表情も、好きな女の表情ならなんでもお見通しだ。
目が充血して、赤くなっていた。
何があったんだ?
俺が何かしてしまったのか?
少なくとも俺の撮影が始まるまではなんともなかったはずなのに…。
撮影中も…葵はいなかった。
見とけよって言ったのに…。
「葵……」
「蓮、何かしたの?」
桐花さんが俺の隣まで来て声をかける。
「何もしてないです…」
「……まぁいいわ、今は撮影に集中しなさい。わかったわね?」
「……はい」
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『ねぇ祐樹くん…次の休みに…デートしない?』
「デート?
仕方ないな、どこ行きたいんだ?」
『あのねっ私…海に行きたい!』
…………海……。
葵……。
『祐樹くん?』
「あ、海?今の季節混んでそうだな」
『そうかな?まだそんなに暑くないし多くないよ〜』
「花森は泳げるのか?」
『あ……』
?
「カット」
琴李京香のカットの声がかかる。
まだシーンは終わってないんだけど……。
「及川くん……このときは”香澄”だよ?」

