撮影なんてとうに始まっているだろう。
それでも私は動けないでいた。
藤堂さんが撮影現場に戻ったのは何分まえだったっけ。
「蓮と……別れる…」
付き合ったのは…ほんの2日前なのに…もうこういう話になってしまうのか…。
わかっている…。
蓮と私の住む世界が違うことぐらい…。
わかっている……ようでわかってなかったんだな。
「好き…だよぉ……」
自然と涙がこぼれてしまう。
好きなんだもん……。初めて好きになった人なんだもん。
「やだ……よぉ……」
そんな私の嘆きも…誰に届くこともなかった。
私はこれからどうしたらいいんだろう。
私の想いを突き通せば…蓮にとっての邪魔になる…。
何かを犠牲に…しなければならないんだ…。