「琴李さんは……わざと俺を葵に会わせたんですか?」
「そんなわけないでしょ。
誰が可愛い妹を俳優なんかに売りますか。
でもあなたたたちが出会ったのは必然だったのかもね。
あなたたちは会うべきして出会った。
お互いに……惹かれあったのよ」
「…………必然…」
俺が普通科に通わなければ、葵に出会うことはなかった。
俺がダサい格好をしていなければ、葵と話すことはなかった。
「葵に会いたい………」
「あの……監督……。
瀬田祐樹のセリフで……花森香澄を”葵”と呼んだ部分……どうしましょう」
スタッフの1人が琴李京香に尋ねる。
「声だけ吹き替えたらいいわ。
あんないい演技、これ以上見れないでしょうから」
”いい演技”琴李京香に……そう言ってもらえた。
「ほら、立ちなさい。蓮」
そう言ってしゃがみ崩れていた俺に琴李京香が手を伸ばす。
初めてフルネームじゃなくて名前で呼んでもらった。
俺は伸ばされた手を掴む。
「あなたのこと。認めるわ。
最高の俳優になったわね。」
そして周りからまた歓声があがる。
素直に嬉しい。琴李京香に、自分の本当の演技で認めてもらえたこと。

