いまならわかるよ……。映画の中の瀬田祐樹の気持ちが……。
アドリブで琴李京香に演技を見せたとき。
あそこのシーンの瀬田と俺はいま同じ状況なのか……。
瀬田も好きな女の子花森香澄が元カレと仲良くしてるのを目撃したんだっけ。
あの時俺はどんな気持ちで演技してただろ。
どうしてあんな冷静に花森香澄に問い詰められたんだろう。
俺は怖い。今、葵に会うのが怖い。
葵の口から樫月のことを聞くのが怖い。
俺は何も知らなかった。
恋とはこんなにも複雑で難しいことを。
簡単に欲しいものが手に入らないということを。
琴李京香の言った通り、あの時の演技の俺に心はなかったな。
恋心とは複雑だ。ドラマや映画のようにはいかない。
本当の恋愛はこんなにも苦しいんだな。
瀬田祐樹に同情してしまう……。
ここで諦めるのか?
葵は……もう……。
「瀬田?」
「うわっ……」
考えごとをしていると後ろから話しかけられる。
「歌田さん……」
「どうしたの?浮かない顔して」
そう言って俺の前の葵の席に座る。
「まぁ基本的にいつもそんな顔か」
そう笑って俺の机に頬杖をつく。
「葵と文化祭回るんでしょ?おめでと。
やっぱり瀬田って葵のこと気になるんだ?」
そうだ……文化祭……。
葵は俺と回ってくれるのだろうか…。
樫月くんと回らないのだろうか……。
「俺と……回ってくれるのかな……」

