二人は振り返ることなく屋上への扉を開けて外に出た。
なんで鍵を持っているんだ……。
基本的に屋上の出入りは禁止されている。
なのに……なぜ?
気になってこっそり扉の隙間から覗く。
すると2人は柵の前に立って景色を見ていた。
喋っているようだが俺のいるところまでは何も聞こえない。
すると葵の手をとる樫月。
何をする気なんだ……。
そうして重なっていく2人の体……顔……。
逆光で影のように見えるけど……あれは……キス…………。
やっぱり葵は……。
樫月は葵が…………。
俺の入り込める隙間なんてなかったのか?
そこから俺は無我夢中になって走る。
そして行き着いた先は教室。
俺が登校しても誰も何も言わない。
目もくれない。
俺もそんなことにかまってる場合じゃない。
情緒不安定とはこのことか?
俺は葵が初恋だから……わからない。この胸の痛みが。
こんな気持ちをするのは初めてだ。
胸が痛くて張り裂けそうだ。
俺は及川蓮というルックスで、今まで欲しい物は何でも手に入れてきた。
したいことはしたいように。後悔しないように。
なのに葵は上手くいかない。
手に入れたいのに手に入れられない。
好きと伝えることがこんなに難しいことなのか。
両想いになることがこんなに難しいことなのか。
恋愛初心者の俺には難しすぎる。
恋愛とはこんなに心が痛むものなのか。

