「おいしい……」
今は瀬田と朝ごはんを食べている。
つい張り切って、抱きしめられて寝ていた恥ずかしさの勢いでたくさん作ってしまったことは内緒。
「桐花さんが料理できないのって本当か?」
「うん…お姉ちゃんが唯一できないことが料理」
へー、と感心しながら食べ続ける瀬田……及川蓮。
いつの間にかお姉ちゃんのことを桐花さんと呼んでいる。
「あの……これからも瀬田でいいの?」
「………なんでもいいけど……。
言いにくい?」
学校ではメガネとヅラをしているからともかく、今みたいに変装なしで目の前に居られると、何と呼べばいいかわからない。
「学校はともかく素顔で会うと困るな。
じゃぁなぁ……。”蓮キュン”って呼んで」
「……………………………………は?」
今なんて言った?レンキュン?
気持ち悪い!
「お前頭の中で失礼なこと考えてるだろ……嘘に決まってんだろバカが」
絶対に私のほうが瀬田なんかより頭いいって言い返したくても呆れて言葉が出ない。
「絶対に嫌。気持ち悪い」
「気持ち悪いまで言うか……。
蓮でいいよ。短いし」
「なっ……私だけ名前で呼ぶとか馴れ馴れしいし嫌だよ。もう及川でいい?」
名前で男の人の名前を呼んだことなんてもちろんない。そんな挑戦的なことはできない。

