「あー、だからそこは分母分子をxで割るんだって…」
勉強は始まったものの、意識しているのは俺だけのようで、逆に恥ずかしくなる。
篠はいつものように俺に教えてくれる。
篠の真っ白な腕が俺の方に伸びて、ていねいな字で等式を書いていく。
「わかった?」
「………うん」
わかるけど、それ以上にやっぱり集中できない。
篠の部屋にある少し大きめのローテーブルに向かい合って座っている。
目線を上げると目の前には篠。
意識しないわけがない。
「大丈夫?何かそわそわしてない?」
「別に……」
とにかく集中しよう。
せっかく篠が休日を削って勉強を教えてくれてるんだ…。
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どのくらい経っただろうか。
窓から見える空は赤く染まってきていた。
「夕方か……。篠……俺………」
”そろそろ帰るわ”という言葉を言おうとして止まる。
篠が寝ている……。
鉛筆を持った状態で、問題集とにらめっこした状態で、俯いてると思えば、小さな吐息が聞こえる。
よく見れば、昨日の難しい問題集で、昨日から30ページ以上進んでいた。
負けてられないな………。
自分の着ていた薄い上着を篠にかけ、もう一度問題と向き合う。
篠が頑張っているんだから俺も頑張らないと……。
こんな風に勉強を頑張るのも初めてだ。
篠といると、俺の初めてが増えていく…。

