なぜだろう。
暗闇が嫌いなのに、今日は落ち着いてしまう。
自分から抱きついたはずなのに今は私が抱きしめられている状態。
男子なんて嫌いだったのに。抱きしめられるなんて考えられなかったのに。
どうして瀬田には心を許してしまうんだろう。
「瀬田がいてよかった…」
「え?」
純粋に思う。
今日手伝ってくれたのも、山から落ちた時に助けてくれたのも…瀬田でよかった。
「山から落ちたとき、助けてくれた。
今日も、手伝いに来てくれた。
背中を押してくれた。
勇気をくれた。
私、テスト頑張る。
姉を越えるためじゃなくて、瀬田にご褒美もらうために」
「おう、」
そう言って私の頭を撫でてくれる。
「瀬田、いつもありがとう」
下を向いていた顔を上げて、精一杯の笑顔を作る。
私の感謝の気持ち。
ちゃんと伝えたい。
時が止まる。
瀬田の撫でていた手が止まる。
時間が止まったかのように、瀬田と私の目が合ったまま離れない。
瀬田が私を捉えて離さない。
「まじで不意打ちやめろよな……」
そう言ってる瀬田の顔は少し赤い。
瀬田の手が私の頭から頰に移動する。
瀬田の顔が近づいてくるのがわかる。
私も固まったように動けない。
近づく…私たちの唇…。
上唇が触れ合って……。
「葵の上!!!!!!!いるの!?」
「っ!!!!!!」
「ぅいってぇ!!!」
いきなりドアの外から聞こえた声。
その声を聞いた瞬間、重なっていた瀬田の体を思いっきり突き飛ばした。

