俳優と、恋愛と。






「あ?何だって?聞こえないよ篠」





「っ……わかりませんっ……」





「だから声が小さいんだよ、篠葵!」





「わかりません…」





腹が立つ。
でも私が悪い。
解けない私が悪いんだ。


手に持っていたチョークが、握りすぎたのかポキっと折れる。





「物に当たるなよ。
あーあ、やっぱりお前はダメだな。」





黒板の方を向いて立ったまま、私は動けない。仁王立ちの状態で、後ろから先生が話す。





「期待するほどでもないよ。
こんな問題も解けないなんてな。
何を勉強してきていたんだ」





振り向けない。
誰にも見せる顔がない。恥ずかしい。





「わかるか?篠葵。
そんなんだからお前は篠桐花に勝てないんだよ。」





手に力がこもる。目頭が熱くなる。
わかってるんだ。そんなこと言われなくてもわかってるんだ。
私は姉には勝てないんだ。



全身に力が入る。
ここから逃げたい。全てを捨てて走って逃げたい。
でもそんなことはできない。
教室がざわつく。