「カット」
琴李京香の声が聞こえる。
は?
目が覚める。
目の前にいるのは篠じゃない。杉浦みずき…。
「なんで杉浦みずきが……」
俺の頭の中は混乱状態。
篠は……って、今撮影中か!?
最悪だ俺は…集中してなかったのか?
いや、集中しすぎてこうなったのか…。
「及川蓮。」
「は…はい……」
振り返るとずっと座っていた琴李京香が仁王立ちで俺の前に立っている。
バレている。俺が集中してなかったことが。
「すんません…、俺…」
「よくやった。」
「は?」
”よくやった。”
今、琴李京香の口からそう聞こえたのは気のせいか?
うん。気のせいだ。あいつが俺をほめるわけ…。
「やっぱり学校に行かせて正解だった。
恋はできたのか?」
「は、?恋なんて…できてたら苦労してねぇよ………」
「そうなのか?」
なんでそう思うんだ?
俺は……集中してなかったんだぞ?
目の前にいるのは篠だと思ってたんだぞ?
「最後の演技は瀬田祐樹ではなかった。」
「え?」
「最後の演技は及川蓮だった。
素のお前だった。何を考えていた?」
やっぱり琴李京香にはバレている。
俺が違うことを考えていたことを。
「いや…。違う…別に気になってるだけで…好きなわけじゃ……」
そうだ。ちょっと関わる機会が多いだけ。
じゃぁこの気持ちはなんなんだろうか。

