俳優と、恋愛と。







「痛むか?」




『ううん、もう平気だよ』





どこか痛そうな表情をして言う。





「………なんで…手伝ったんだ…。俺は頼んでない」





花森香澄が手伝いに来たのはなぜなのか。これは本当は中庭で聞く予定だったもの。

花森香澄は、どこか篠に似ている…。
性格が真逆ってぐらい違うけど。


思い出す。化学実験室での掃除を。





「だって…先生、おかしいよ。
瀬田くんは確かにちょっと真面目に見えないかもしれないけど、努力してるもん。
だから手伝いに行ったんだよ?
二人でやった方が早く終わったでしょ?」




似てるようで似てないんだ。
あの時、化学実験室で篠は来た理由をなんて答えただろうか。

可愛げもなかった。
プリプリした様子で、頰を赤く染めて。




あの日に知った。
篠が暗いところが怖いこと。
ただの強がりなやつだってこと。
かっこ悪いと初めて言われた。
素直じゃないやつだとわかった。

そうだ、あの時も。
暗闇の中で差し伸べた俺の手を掴まなかった。




そうして前を向くと…篠……?
花森香澄に見えなかった。
今目の前に見えるのは…篠だ。