それから俺は特にすることもなく、事務所で学校の宿題をひたすらといていた。
机には篠から借りた紙の辞書がある。
始めは引き方すら知らなかったが、休み時間に篠に教えてもらって使いこなせるようになってきた。
「及川君勉強してるの?」
”愛の叫び”の打ち合わせが行われる会議室で勉強していた俺。
それを覗き込んできたのは杉浦みずきだった。
「お久しぶりです…」
「あ、久しぶり〜。
紙辞書なんて洒落てるね〜。
やっぱり財宮司学園の普通科はキツイ?」
紙辞書は洒落ているのだろうか?
周りの生徒は最近は”電子辞書”というもので俺の倍早く単語を引いている。
「まぁキツイっすね。
でも勉強って今まで真面目にして来なかったから、真面目にしてみると意外と楽しいっすね」
「わぉ、及川君からそんな言葉が聴けるなんて思ってなかったわ」
と笑いながら俺の隣の席に腰掛ける。
「あ、これ綴り間違えてる…」
「え、?あ、本当っすね。
俺、知ってる単語数少ないから人の倍辞書引かなきゃならなくて大変なんですよ」
「私お勉強は人並みにできるのよ〜!
わからなかったらぜひ聞いて!!」
と、胸にポンと拳を当てて胸を張る杉浦みずき。
それをハハッと笑って促す。
「もぅ、年上バカにしたらダメだぞ〜、絶対信じてないでしょ〜」
信じてなくはないが、財宮司学園の天才エリート集団をいやってほどみれば、どの辺が人並みなのかわからない。

