僕の好きな女の子

夏休みまではと決めていたけれど、一ヶ月は私にとって長く地獄のようだった。
毎日、日に日にイジメは酷くなって行く一方だった。
両親への嘘が増えて行く。
物が無くなり壊されると買うしかなくて、何度も嘘を重ねた。
いっそうのこと言ってしまおうかと思ってはとどまる。
言えば楽になる。
もしかしたら、学校に普通に行けるかもしれないと思った事もあったけど、やっぱりイジメられてます。なんて言えなかった。
寝る時は決まって寝れなくて明日の事を考えてしまう。
明日は何をされる?何を言われる?
考えては胃がキリキリして寝れない。
自分でも気づかないうちに寝てしまう、そんな毎日だった。
朝はご飯が喉を通らなくなった。
だからギリギリまで寝たふりをして、慌てて出るようにした。
毎日が嘘で作られた生活になっていった。
一学期終わりの日、「私夏休みはパリで暮らすの。会えないけど淋しがらないでね。」と言われた。
夏休みも、もしかしたらって思っていたから、正直嬉しくてたまらなかった。
帰り道明日からこの苦しみが夏休みの間でもなくなると思うと嬉しくて泣いた。
8月に入って、いつもなら毎年行っている海は忙しいと今年は行けなくなった。
クーちゃんを椅子に座らせて水浴びをした。
太陽の光でキラキラ光る水が綺麗だった。
噴水の様にホースを上に向けた。
その下に入り頭から水を浴びる。
ふと思い出した。
学校でのこと…トイレに入ってると、上からホースで水をかけられた日のこと。
「アンタ臭いから綺麗にしてあげる。」
「汚いから綺麗にしてあげる。」
「私たちって、優しい〜!!」
耳に残る笑い声が渦を巻く。
涙が流れた。
クーちゃんの前では泣いてもいいんだと思える。
あの時の水は突き刺さる程冷たく感じたのに…。
同じ水なのに今日の、クーちゃんと一緒に居る時のこの水は温かい。
クーちゃんがこっちを見てる気がして笑った。
夏休みなのに、あの子達に会わないのに、学校に行かないのに、私の頭の中も心の中も、アイツらが支配している。
私…夏休み終わって欲しくない。
もう学校には行きたくない。
もうアイツに会いたくない。
もう…頑張れない。
お母さんに言ってしまう?
お父さんに助けてもらう?
ううん、出来るわけないのに考えても意味がない。
残り一ヶ月…あっという間かもしれないけれど、今は考えたくない。
それからは頭に浮かんでは消すことばっかりだった。
ふとした時にアイツらが出てくる。
そのたびにクーちゃんに話しかけて心を鎮めていた。
クーちゃんは何も言わない。
何もしてはくれない。
けれど、ただ話を聞いてくれてる気がして4歳の頃から話しかけていた。
話すと不思議なもので心が落ち着く。
そっか、そうなんだ。頑張れ、希華ちゃん。と言われてる気して、いろんなことを頑張ってこれた。
クーちゃんは私の友達で兄弟のいない私には弟のような存在。
私の心の支えだった。
これからもずっと心の支え。
だから私は頑張れる。
頑張るしかない。