(あ、つぐみ姉にもなんか買って帰ろう)

……我ながら名案である。

招待券を譲ってくれたつぐみ姉へのお返しは何が良いかと探していると、ちょうど良さげなミルククリームのジャムとママレードのジャムが見つかった。

朝はパン派のつぐみ姉だから、ジャムをあげればきっと喜ぶだろう。問題はどちらを買うかだ。

「王子さん、つぐみ姉にあげるならどっちが良いと思います?」

私と同様、店内の陳列棚を覗いていた王子さんに駆け寄って話しかけてみたが、一向に応答がない。

……王子さんの瞳はある一点に釘づけになっていた。

「……萌?」

そう呟いた王子さんに反応するかのように、視線の先にいた女性がこちらを向く。

「瑛介?」

まるで、テレビドラマのワンシーンのようだった。

互いの名前を呼び合ったふたりは、磁石のように引き寄せられていった。

「やだ!!本当に瑛介なの!?」

「ええ。久し振り……ですね」

運命的な再会に驚いている男女に、私は嫌な予感しかしなかった。