(うわあ……素敵なホテル……)

天井を見上げればスワロフスキーがキラキラと輝くシャンデリア。壁には繊細な彫刻とステンドグラス。私はついついここがどこだかを忘れ、おのぼりさんのようにあちこち視線を彷徨わせてしまった。

オリエンタルプラザホテルは都内でも一二を争うほどのラグジュアリーなホテルだった。

最寄りの地下鉄の駅に直結している通路を歩いてロビーに到着すれば、すぐさまボーイが来訪者を歓迎して頭を下げてくれる。

そつのなおもてなしにうわっと感激してしまう。

(一度で良いから泊まってみたーい!!)

大好きな人と憧れの高級ホテルにご宿泊……。

想像するだけでニヤニヤ笑いが止まらない。

それにしても、レストランの招待券をほいほいくれるなんて気前のよい人もいるもんだなあ。

これは譲ってくれたつぐみ姉にしっかりお礼を言っておかねば。

ドレスコードまであるようなレストランなんて、自分の給料ではそうそう来られるまい。

(王子さんどこだろう……)

不相応な場所での唯一の心の拠り所を探すと、見事な装飾の柱に寄りかかって腕時計を眺めている王子さんを発見した。

(スタイル良いな……)

高級ホテルにいるというのに違和感ゼロである。渋めのツイードのジャケットにブルーのシャツとアーガイルのセーターというオシャレ上級者といった佇まいである。

スラックスから伸びるおみ足の長いことといったら、私などが話しかけてしまって良いものか、普段なら判断に迷う所である。

しかし、今宵だけは別である。

どんなに素敵な王子様がいたとしても私が話しかけないことには、おとぎ話も始まらないのである。