残ったロールケーキを半分持たせてもらって帰宅すると、早速王子さんが貸してくれたファイルをベッドに俯せになりながら覗き込む。

ファイルには会場の雰囲気、料理の味や種類、スタッフの接客態度までもが丁寧に纏められていて、とても見やすかった。

そのデータ量といった、メインとなるフロア以外にもトイレや洗面所、玄関といった細部まですさまじかった。

(すごい……)

ところどころに添えてある王子さん手書きのコメントを指でなぞる。

“肉料理が絶品”

“通路が狭いため、搬入注意”

流麗な字で書かれたいくつものコメントに、彼の生真面目な性格が窺える。

(どうやって調べたんだろう……)

王子さんの功績が努力のたまものであるということを痛感しながら、パラパラとページをめくっていく。

大事なファイルを貸してくれた王子さんのためにも、お披露目会は絶対に成功させたい。

いや、成功させなければならないと決意を新たにしたのだった。