オーナーとの打ち合わせが終わり、インテリアも問題ないと確認できたので、今日のここでの仕事は完了。帰ろうと思って黒原さんを探していると、女性の店員と楽しそうに談笑していた。
イスに心酔……とかいいつつ、やっぱり女の子が好きなんじゃない。だいたい、大好きな“女王様”がいるんでしょ? なのに、ほかの女性に……なんて、最低だ。
つい浮気された自分の立場に置き換えてしまい、心の中で毒づいてしまう。すると、わたしがいることに気づいた黒原さんが店員に挨拶をして、こちらに歩み寄ってきた。
「水門ちゃん、打ち合わせ終わったの?」
「はい、なので帰ります。まだ見たければ残っていただいても結構ですよ」
インテリアが楽しみでついてきたのに、女性店員と楽しそうに話をして……と思うと、ついツンとしてしまう。
スタスタと出入り口へ向かっていると、黒原さんはすべてお見通しかのようにクスッと笑った。
「ううん、店員さんから面白いブランドについても聞けたし。ここにはまた落ち着いてから伺うことにするよ」
「……そうですか」
なんだ……ちゃんと仕事してたんだ。
冷たい態度をとってしまったことを、ちょっとだけ反省する。
帰りは夕方のラッシュで混み合う時間だったけれど、始発駅から近い駅だったのでふたつ空いている席を見つけて並んで座ることができた。
これで壁ドンされずにすむ……。
ひと安心しながら電車に揺られていると、ひと駅停まるたびに人がいっぱい乗り降りして、わたし達の前にも真新しいスーツを身に纏った新入社員と思われる男性ふたりが立った。
「この時間は混みますね……」
何気なく黒原さんに話しかけると、スマホを見ながらまたニヤニヤしていた。
「“女王様”ですか? 大好きなんですね」
呆れながら言うと、黒原さんは恥ずかしがることなく、大きくうなずいた。
「そうなんだ。素晴らしんだよ、この女王様は。佇まいがたまらない。ボディラインもさることながら、悩ましげな脚線は美の極致。いつも支えてくれる背中にも、白くふくよかな場所にも、すべて口づけしたくなる……」
黒原さんは蕩けたような顔で女王様を褒めだした。顔つきもさることながら、言葉も色っぽい言葉を使うから、こちらが恥ずかしくなってくる。
前にいる男性達に聞かれたら、変な想像されちゃうんじゃ……なんて、勝手に心配していると、黒原さんがヒョイとスマホを見せてきた。


