現状報告、黒ネコ王子にもてあそばれてます!【試し読み】



店へ入り、黒とグレーでまとめられた上品な店内を見渡していると、恰幅のいい男性がやって来た。

「水門さん、いらっしゃいませ。いつもお世話になっています」

わたしに声をかけてきたのはこのインテリアショップのオーナーだった。

「こちらこそ、お世話になります。あの、以前お願いしたバースツールとカウンターの見本を見せていただきに来ました」

今回、ショールームの場所のテーマは“バー”。わたしが担当するテイストは“シック”ということで、それにピッタリのインテリアを選んだつもりだけど……どうかな。

カタログと現物ではイメージが違うことが多々ある。確かに同じものなんだけど、細かなところや実際に置いてみたときの映え方などは、直に見てみないとわからない。

オーナーに挨拶をし、黒原さんの紹介がまだだったことを思い出す。

「あっ、それと……こちら、今日からコーディネート課に配属になった黒原です」
「黒原薫です。よろしくお願いします」

黒原さんは頭をさげると、作られたばかりの名刺を差し出した。

「黒原さんですね、よろしくお願いします。見本は一番奥のスペースにありますので、ゆっくりご覧になってください。それから打ち合わせをしましょう」

そう言ってオーナーは一礼すると、スタッフルームへ入って行った。

「じゃあ、奥へ行きましょうか」
「そうしようか。想像通りのものだったらいいね」

わたしが前に立ち、一緒に歩き出す。しかし、いつの間にか後ろにいた黒原さんの気配が消えていた。

「あれ……黒原さん?」

店内を見渡すと、黒原さんは途中でべつのインテリアへ寄り道をしていた。

仕事が好きというか、インテリアが好きというか……まぁ、いいか。

わたしは自由に行動する黒原さんに少し呆れながら、ひとりで奥へと進んだ。

そこにはカタログで見た通り、重厚感があって、だけど古くさくなく洗練されたものがあった。

黒を基調にしたマーブル石のカウンターに、スラリと背が高い革張りのバースツール。カタログの通り……いや、それ以上に美しくて安心する。

「このカウンターとスツール?」

やがて一通り寄り道を終えた黒原さんが、わたしのそばへやって来た。

「はい。黒原さんから見て、どうでしょうか?」

黒原さんは顎に手を当て、じっと静かにカウンターとスツールを眺める。それから、瞳を妖艶に細めた。