現状報告、黒ネコ王子にもてあそばれてます!【試し読み】



就業時間は九時から十八時。悲しいことに、時間通りに終われることは少ない。

お昼休憩は十二時から十三時までなので、わたしはそれに合わせて十一階の食堂でご飯を済ませ、就業開始の五分前に席へ戻った。

隣の黒原さんはすでに席に着いていて、スマホを見ながらなにやらニヤニヤと頬をゆるめている。大好きな女王様とメールでもしているのだろうか。

そんなことを思いながら彼の足元を見ると、床に置かれていたはずの段ボールはなくなっていた。

よかった……片付けもしていないまま一緒にでかけたら、許可をもらった白矢木課長はともかく、部長になにを言われるかわからない。

やがて十三時となり、就業開始のベルが鳴ると黒原さんはスマホをズボンのポケットにしまったかと思うと、またどこかへ出かけてしまった。

また挨拶回り? それとも、異動してきたばかりだから、人事課に書類をもらいに行ったり、提出したり……とかかな。ちゃんと十五時には戻って来るよね……?



心配しながら仕事をしていると、あと五分ほどで十五時というころに席へ戻ってきた。

「水門ちゃん、そろそろ出る?」

意外と時間にはキッチリしているのか、はたまたインテリアショップへ行くのが楽しみなのかわからないけど、戻ってきてくれてホッとした。

「はい。では、行きましょう」

わたしはベージュのスプリングコートを羽織り、打ち合わせで使う資料を入れた荷物を持つと黒原さんと一緒にビルから出た。

春の日差しは暖かいけれど、目を開けていられないほど風が強い。そのせいで満開の時期を過ぎた桜が舞い散っていた。

「電車で移動なので、まずは駅へ……」

わたしは風で乱れる髪とスカートを押さえ、重たい荷物を抱えながら黒原さんに説明する。

今から向かうインテリアショップには、歩いて五分のところにある駅へ向かい、そこから一本の電車で行ける。社用車を使って移動もできるけど、すべて使用中となっていた。

こんなことなら、社用車の予約をしておけばよかったな……。

運転が苦手なので、ひとりのときはもっぱら電車移動。駅まで歩くことも慣れているけど、それでもこんな日は車移動のほうがよかったと歩きだして思う。

「日本で桜を見るのも久々だなぁ」

黒原さんは髪が乱れるのも気にせず、風に舞う桜の花を楽しんでいる。そして、わたしから荷物を取り上げると、風上に立ってくれた。