「ねぇ…みんな」 私は大会の優勝で気持ちがほころぶみんなに話すことにした。 「筧 薫さんって知ってるよね?」 音楽をしている人間で知らない人はいない。 みんながそりゃあそうだと当たり前だと言うように頷いた。 「筧 薫さんが来てて…今度の土曜日みんなでスタジオにおいで。って あの筧さんにスカウトされた…」 私がそう呟くとみんなは瞬きをすることを忘れ唖然としていた。 数秒の沈黙。 何かが切れたと同時にみんなの驚きに満ちた叫びが響き渡った。