「なくてさぁーどこも洗えねーじゃん?」



「どこもって…」



全部石鹸で洗う気?



「なぁ、頼むって」



有馬がインターホン越しに、お願いのポーズをとっている。



「……分かったわよ」



一旦ピッと通話ボタンをオフにし、洗面台の下から石鹸を一つ取り、菜実は玄関に向かった。



「…つうか、買ってこればいーでしょ?」



ブツブツ言いながらスリッパを履くと、ふと玄関に立て掛けられてるミラーを見る。



「あっ…髪の毛団子にしてる…ま…いっか?」



別にカレカノじゃないし。