リナリアの王女

 彼から語られる昔の話し。
「初めは赤ん坊の夢だったから全然意味が分からなかったな」
過去の自分か、私の事を思い出してか、笑いながらそう言った。

「その赤ん坊が成長して、可愛らしい女の子になった。でも俺にはこの夢が何を意味しているのかさっぱり分からなかった」
俺は男だから、俺の赤ん坊の頃を夢で見た、というわけではなかったしな、と。
「次第に俺の夢に出てくる女の子に興味を持った。なぜ俺の夢に出てくる?そう思っていった」
「俺の夢に出てくるのには何か意味があるのか?幼いながらにそう何度も思ったが、俺は夢の中で言葉を発する事が出来ず、いつもただ見ているだけだった」

「その女の子は良く泣く娘だった。でも俺には泣き止ませてあげる事も、その涙を拭ってあげる事も出来なかった」
もどかしいと感じていたよ、今度は少し苦笑しながら言った。

「違う夢では女の子がとても楽しそうにピアノを弾いていた。あの泣いていた顔が嘘のようにその顔は満面の笑みだったんだ」
「こんな顔も出来るんだ、と思ったよ。だからこそ、泣いてほしくない、俺があの笑顔を守ってあげよう。悲しませるものから守ってあげよう、そう思い始めたんだ」