リナリアの王女




 「今日、グレンさんから・・・聞いたの」


「グレンから?」
思わぬところでグレンさんの名前が出てきたからか、それとも大量の仕事を罰という名目で渡された事からか、クラウドがまた少し不機嫌になってしまった。

「グレンから何を聞いたんだい?」
それでも努めて優しく私に聞いてくれる。






「クラウドの、その・・・初恋の話し」





それだけ言ってクラウドにも意味が通じたんだろう。
少し居心地が悪そうな顔をした。




「クラウドがそんなに長い間、想ってくれてたなんて知らなくて、私!」




一体どれだけ彼を傷つけていたんだろう。
彼はその心に一体どれだけの傷を負ったというのだろうか。

私と初めて会った時、初めて言葉を交わしたとき、彼はとても嬉しそうな顔をした。

そして、私が彼に酷い言葉を言った時、彼はとても傷ついた顔をした。

それでも彼は私を一度も責める事などなかった。
自分のこの気持ちを信じことが出来るようになるまで待つ、そう言ってくれた。

「俺が勝手に想っていた、ただそれだけだ。エリーゼにその事を知ってもらおうとは思っていなかった」
彼はやっぱり優しい。
こんなにも長い間想ってきたという事実は私には言う必要がなかったと。

「エリーゼが俺の事を好きになってくれればそれで良いと、そこに別に俺の長年の気持ちなど関係ないと思っていた。この気持ちがエリーゼにとって重荷になってしまわないように」
彼はなおも続ける。
「いつからだったか、俺はエリーゼの事を夢で見るようになった」