リナリアの王女


 「初恋をして泣かなくなった・・・」

私は誰に聞かせるでもなくポツリとそう言った。
『はい。クラウド様は初恋をした事で泣き虫を脱却したんですよ』

一体どんな人だったんだろう・・・?

幼いながらも恋をして、そして泣き虫な自分を治そうとするなんて。
『自分はあの娘と結婚するんだってそれはもう大騒ぎでしたよ』
あの頃はまだ次期国王になる為の慣わしなど理解できる年頃ではなかったので説明もしていませんでしたしね、とグレンさんは言った。
結婚したいと思える程の人・・・私の胸がまた痛んだ。

今は私の事が好きなはず・・・。

それは本当に・・・?

やっぱり国王になる為に・・・?


でも初めて会った時のあの言葉、あの瞳に嘘は感じられなかった。


じゃあ初恋の人の事はもう何とも思ってない・・・?

クラウドの弱みになる事を聞けると思っていたのに、私の気分は更に落ちていった。
『エリーゼ様?大丈夫ですか?』
グレンさんに聞かれてずっと黙ったままだった事に気づいた。
「えっ!?あ、大丈夫ですよ!」

私は慌てて笑顔を作った。
ちゃんと笑えているかどうかは分からないが・・・。
『もしお気分が悪いのでしたら、この話しの続きはまた後日に致しましょうか?』
やっぱり上手く笑えていなかったのだろうか?
グレンさんは私を気遣ってそう言ってくれた。

正直に言うとこれ以上クラウドの初恋の人について聞くのは辛いという気持ちはある。
でも今話しを終わらせてしまうと、モヤモヤしたままの気持ちを抱え続ける気もする。

「全然大丈夫ですよ!!ただどんな人だったのかなって考えていただけです。だから続けて下さい」
『分かりました。でももし途中で気分が悪くなりましたら遠慮なくすぐに仰って下さいね』
と念押しして話しを続けてくれた。