リナリアの王女

 「グレンさん?入っても良いですよ」
私は慌てて入室の許可をした。
『失礼致します。急にお訪ねしてしまい申し訳ありません、エリーゼ様』
グレンさんは部屋に入った扉の所で綺麗にお辞儀をした。
「頭を上げて下さい!!丁度暇をしていたところだったんで来て下さってむしろありがたいです」
『そう言っていただけますとこちらも助かります』
「ところで、一体何の用で今日は来て下さったんですか?」

忙しいグレンさんがわざわざ私の部屋まで訪ねて来てくれたんだ。
何か大切な用があるに違いない。


『エリーゼ様が最近お部屋から出てこないと使用人達から聞きまして、こうしてお加減を窺いに来た所存です』


その言葉に私は返す事が出来なかった。
使用人さん達に迷惑を掛けてしまっている事にも申し訳なさを感じてしまう。
ひょっとして私がやっている事は私が思っているよりも良くない事なのかもしれない・・・。

『あぁ、ご心配されなくても大丈夫ですよ。使用人達は確かに心配しておりますが、その事に対して苦言を申し上げに来たわけではありませんので』
まるで私の思考を読んだかのようにグレンさんが補足してくれた。

本当にサラちゃんやクラウドといい、グレンさんまでも私の考えをあっさりと読んでしまうから、時としてありがたいが困ってしまう。


私が分かりやすいのかもしれないけれど・・・。


「じゃあどうして・・・?」
『以前、クラウド様のご幼少の時の事をお話しする約束をしましたでしょう?今日はその約束を果たしに参りました』
グレンさんは悪戯に瞳をきらめかして私にそう言った。
「そうだったんですか・・・」
『昔のクラウド様の恥ずかしい失敗談などをお話しして差し上げますよ』
クラウド様の弱みになるような事をね、と悪戯な瞳と、そして笑みを隠そうともせず、私に言った。

きっとクラウドと私の間にあった事を誰かから聞いたんだろう。
誰かって言ってもクラウド本人かサラちゃんしかいないんだけどね。
それで私の為にわざわざ来てくれたんだろう。

「グレンさん、私もクラウドの弱みを握りたいなって思ってたから嬉しいです。ちょっと待ってて下さいね!今お茶の準備をしますから座って下さい!」

私も同じように意地悪く笑ってお茶の準備に取り掛かった。
折角私が知りたい情報を持ってきてくれたんだ。
手厚くおもてなしをしなくては罰が当たる。


グレンさんは一体どんな事を聞かせてくれるんだろうか?
考えただけで胸が躍る。


初めはクラウドの昔の事が単純に知りたいと思っていた。
私の事ばっかり知られていて、私は全然知らないなんて寂しいと思ったからだ。
だけど今、クラウドと喧嘩ではないけれど気まずい状態になっていて、更に全く会いに来てくれないという自分勝手な不満も溜まっている。
だから純粋にクラウドの小さい頃の事が知りたいというよりも、何かクラウドの弱みになるような事を少しでも多く知って、切り札を作っておきたいと思うんだ。

私はきっとお茶の準備をしながらあくどい笑みを浮かべていた事だろう。

『何からお話し致しましょうか』
グレンさんと自分の二人分のお茶を準備し終え、椅子に座ってグレンさんを見る。
グレンさんは少し考える素振りを見せて、こう話しを切り出した。










『クラウド様の初恋についてお話し致しましょうか』




と。