リナリアの王女

 「エリーゼ、これをつけて」
バラ園に着いて奥に行くとちょっとした倉庫があり、クラウドはそこに入って二人分の軍手を持ってきてくれた。


クラウドに軍手ってちょっと、いやかなり似合わない・・・。

キラキラの誰もが羨むような王子様みたいな人が軍手を持ってるのはちょっと・・・。


私は笑わないように必死で堪えた。
「バラの棘で怪我をしたらいけないからね」
そんな私の気持ちなど露知らず、クラウドはいつもの綺麗な笑顔を浮かべ私に軍手を一組くれた。
「ありがとう」
早速受け取った軍手をはめてクラウドを見る。

「まずは花摘みをしようか」
「花摘み?」
「ああ。咲ききっているバラは次のバラの成長の邪魔をしてしまうからね。摘んでしまうんだよ」
「まだ綺麗に咲いているのに?」
「綺麗に咲いているバラの下では新芽が出ているだろうからね。また綺麗に次のバラが咲く為には必要な事なんだよ」

クラウドが言っている事は分かるが、せっかくこんなに綺麗に咲いているのに勿体無い気がする。

「摘むのは花が全部咲ききっているのだけだからそんなに寂しそうな顔をしなくても大丈夫だよ」



・・・私ってそんなに顔に出てしまっているのだろうか・・・?



それもあるだろうが、クラウドが私の感情の変化を敏感に感じてくれているのだろう。
「分かった」
「このバラ園は広いからね。一日で全部を終わらせる事は出来ないから、焦らないでエリーゼのペースでやれば良いからね」
クラウドのその言葉をきっかけに私はバラの花摘みを始めた。