リナリアの王女

 



 『・・・エリーゼ様は変わったお考えをお持ちなのですね。使用人を友達などと・・・』



「それサラちゃんにも言われました。でも私がいた世界では使用人さんがいる生活なんて送っていなかったんですよ。だから人に何かをやってもらうのもなんだか慣れなくて・・・。サラちゃんは同い年だったから使用人より友達っていう立場になってもらいたかったんです。
『エリーゼ様は異世界からいらしたのでしたね。いつかそのお話をお聞かせ下さいますか?』
「お話ししたいのはやまやまなんですけど、少しずつ元の世界の事を忘れていってるんです」

寂しい気持ちになってしまったのを察してかグレンさんは、


『では、私がクラウド様のご幼少の時の事をお話し致しますよ』


と悪戯めいた顔で言ってくれた。
私の気持ちが沈んでしまわないように言ってくれたのだろうが、クラウドばかり私の事を知っていてずるいと思っていた私からするとありがたい申し出だ。

「ぜひ!!グレンさんがお暇な時に聞かせて下さい!!」
「おいおい、俺を置いて勝手に話しを進めるのをやめろよ。エリーゼも聞きたい事があれば直接俺に聞けばいい」

クラウドは話しに置いていかれたからか少しむくれたような顔をしながら私の肩を抱いた。
初めて見る顔だ。
やっぱりグレンさんとは付き合いが長いからか気心の知れた仲なんだろう。
常よりも子供っぽい面がたまに見受けられる。
「クラウドはお仕事が忙しいでしょ?ってグレンさんもお忙しいですよね?」
『私はクラウド様ほど忙しくはありませんので、時間を作る事は可能ですよ。それに、クラウド様ご自身に聞きづらい事もありますでしょうから』

私には優しく笑いながら、クラウドには少し意地悪な感じに笑いながら言った。

「じゃあ、今度お話ししましょうね」
確かに本人に聞くよりもグレンさんからの方が聞きやすい。


「エリーゼ、俺に差し入れを持ってきてくれたんだろう?それをくれないのかな?」


結局グレンさんに上手く話しを丸め込まれてしまったクラウドが強引に会話を変えた。
「そうだった。はい、マドレーヌを作ってみたの。休憩の時にでも食べて」
私は運ぶ為に先程借りた配膳用のワゴンをクラウドの前に差し出した。
「お嫌いでなかったらグレンさんも食べて下さい」

多めに作っておいて良かった。この量ならばグレンさんが食べる事も出来るだろう。
『私にも下さるのですか?ありがとうございます。後で頂かせていただきますね』
「これは俺の分だ。グレンにやるわけがないだろう」
まるで自分のおもちゃを誰にも渡さないという感じにマドレーヌの乗ったワゴンを自分の方に引いた。
「渡しておいてなんだけど、クラウドが一人で食べるには量が多過ぎるわ」
「エリーゼが作ってくれたものなんだから、俺の分は俺が全部食べるに決まっているだろう」

なんでそんなに頑なにグレンさんにあげるのを嫌がるんだろうか・・・?
マドレーヌがそんなに好きとか・・・?

『エリーゼ様がお困りですよ、クラウド様。エリーゼ様、クラウド様は初めて自分に作ってくれたものなので誰にも渡したくないようです』
余程嬉しかったんですね。とクラウドを窘めながらも私にクラウドのフォローをしてくれた。


「実は沢山作り過ぎちゃって・・・まだ余っているので、グレンさんの分も持ってきますね!」


私はそう言いながら自分の部屋へと戻って行った。