リナリアの王女

 『貴女は・・・』

部屋に入るとそこにはやはり私の知らない男性がいた。
入室の許可を出したにも拘わらず、なかなか入ってこない私をいぶかしんで扉の近くまで来ていたようだ。
「あの・・・ここってクラウドの執務室ではないのですか・・・?」







「俺の執務室で合っているよ、エリーゼ」







私の疑問に答えたのは目の前にいる男性ではなく、男性の奥にいるであろうクラウドだった。
男性の脇から覗いてみると奥にはやはりクラウドが座っていた。

「良かった・・・合っていたのね・・・」

思わず独り言を呟いてしまった。

「俺の執務室に来てくれたのは嬉しいけれど、何かあったのかな?」
クラウドが近づきながら私に聞いてきた。
当初の目的を忘れ掛けていた自分に気づく。

「えっと、その・・・お茶の時のお菓子を作ったのだけど、クラウドにも食べてもらえないかと思って差し入れに来たの」

少し下を向きながらもなんとか目的を伝える事は出来た。
後は彼に受け取ってもらえるかどうかだ。


「俺に?嬉しいな。ありがとう、エリーゼ」


下がってしまった私の視線に合わせるように、その長身を少し曲げ下から覗き込んできたクラウドの目はキラキラしていて、本当に喜んでくれているのが分かった。
「でも。口に合うか分からないから、美味しくなかったら無理して食べなくても良いからね!」
下から覗き込まれてしまった事に恥ずかしさを覚えて慌てて付け足した。
「エリーゼが作ってくれたものなんだから、美味しくないわけがないよ」

・・・どんな理屈だろう。

「そう言ってくれるのは嬉しけれど、美味しくなかったら本当に無理して食べなくても良いからね?」
しっかりと言っておかないと、私が作ったものならばどんなものでも食べてしまいそうだ。

そんな事にも彼からの愛情を感じて嬉しく思う。

「ああ、分かったよ。でも手作りのお菓子を俺にくれるなんて本当に嬉しいな」
私を見てにっこりと微笑む彼はいつもの大人びたそれよりも、どこか幼く感じられた。