こんなお葬式【長篇】

部屋を出た僕は、献茶の御姉さんを見付けて声をかける。

─もし時間があったら、こっち焼香だけでもしてあげてもらわれへんかな?

彼女達は多くを語らずとも言いたい事は理解してくれるのである。
誰より親族の気持ちがわかる仕事なのだ。

快く無言のオーケーサインをしながら、ウィンクをして仕事に戻って行った。

事務所へ戻ると辺りはかなり陽も落ち、通常であれば通夜式の為に会葬者が集まってくる時間だ。

中式場の方には続々とやってくるが、おばあさんの部屋には誰も訪れないのだ。