こんなお葬式【長篇】

─お顔を見られてたんですか?

─寝てるみたやから……。

そう思えるのも無理がない程、おじいさんは穏やかな顔をしていた。

─お困りはないですか?

─はい、何にもないですよ。ありがとうございます。

ただ顔を眺めていられれば良い……とでも言いたげな程、おばあさんの顔も穏やかなのである。

言葉が続かない程何の要望も要求もない彼女に、後程焼香の準備をする旨のみを伝え一先ず部屋を後にする。

そんな事位しか出来ない自分がもどかしかった。