車にはしっかりと社名が記入されていた。 ご近所には知らせない。という言葉を聞いていながら、頭をそこに繋げる事が出来なかったのだ。 ─大丈夫ですから。 そう言うと、おばあさんはゆっくりと車を降りた。 些細な……しかし自分にとってはとても大きなミスをしたような気になったが、今更どうする事も出来ない。 しかたなく、車から降りたおばあさんを申し訳ない気持ちで確認すると、手には何か紙切れのような物を持っていたのが見えた。