こんなお葬式【長篇】

─おとうちゃん、お疲れさまっ。

僕らは田下さんを、“おとうちゃん”と呼んでいた。

おとうちゃんは、夫婦で住み込みで働く会館の主だ。と言っても単なる雑用人で、昼間は電話番、夕方は通夜時の駐車場係、そしてこうして運び込まれる故人の処置のサポートである。

僕はストレッチャーを降ろすと、おとうちゃんに、「せえのっ!」と声をかけた。

ストレッチャーはベッド部分が取外せ、完全なタンカになる仕組みだ。

前におとうちゃんが、後ろに僕が付き、二階の安置室へ向かう。
会館にエレベーターはなく、階段を使用する為、後ろ側は階段の下側に位置し、非常に重い。

また、水平にしないと故人がずり落ちてしまう為、胸元より上で持ち上げなければならない。

この時、部長は手伝わない。
さっさと事務所で打合せの段取りをするのである。