こんなお葬式【長篇】

おばあさんは搬送中の車のなかで鞄をまさぐり、一つの封筒を取り出した。
そして……。

─あの、今はこれだけしかお支払いできないんですけど、必ず残りは払いますから。

そう言って、『現金』の入った封筒を手渡そうとしてきたのである。

おばあさんの言う「今」とは、まさに『今』なのである。

─あぁ、代金は今すぐじゃなくていいんですよ!

そう言う部長の言葉と被るように、僕はわかってしまった……。

おばあさんがたった一人、おじいさんを残し自宅へ戻っていた訳を。