こんなお葬式【長篇】

─おばあさんに見とれてたわ……。助かった。

そう言って焼香台を手にしようとする僕を彼女は手だけで制し、多くを語らず、部屋の中へ入っていった。

─失礼致します。只今からお焼香をあげて頂きますね。

おばあさんの横に膝をつき、優しくそう言いながら僕に合図を送る彼女。

─それでは只今より、親族焼香に入ります。 武本 静子様……。

彼女の合図を受け、たった一人の『親族焼香』の名前を読み上げた。