獅子王とあやめ姫

 小柄な若い男が書物を両手に抱えて立っていた。
  
 年は二十歳に届くか届かないくらい。

 茶髪に利発そうな密色の瞳が光っている。

 若いがティグリスのような柔らかい雰囲気はなく、その醸し出すものはフィストスのそれに近かった。
 
 「ロファーロ様!し、失礼致しました__。」

 パピアが慌てて頭を下げる。

 だがロファーロと呼ばれた男は許すことも咎めることをしなかった。 
   
 「扉を叩くくらいしてほしかったです…。」

 イーリスがぼやくと、ロファーロと呼ばれた青年は片眉をひょいっと上げた。 

 「おや、話せるのですね。そんなにぐちゃくちゃな顔をして。」