獅子王とあやめ姫

 先程の物腰柔らかなティグリスを思い返し、ああ、と納得するイーリス。
 
 「あの王子様、人望がありそうですもんねぇ…。」

 以外とイーリスが話に乗ってくるので、パピアのおしゃべりはさらに続いた。 

 「そうなんですよ!もう、城の侍女はみんなティグリス殿下にお仕えしたがってるんです。政略婚ってあるじゃないですか、大臣様達の娘は嫌がるどころか、こぞって自ら名乗り出るらしいですよ。」

 ふんわりと軽そうな茶髪に、丹精込めて磨きあげた琥珀のような瞳に、すらりと、のびた四肢。

 王子という肩書きに恥じないティグリスを思い返し、またイーリスは納得した。

 町で一番人気のあった馬屋の一人息子も彼には及ばないだろう(失礼な話だけれど)。

 「でも殿下自身は結婚なさる気はまだないらしいんです。今年18歳になられるのに…王子になるべくしてなった方ですわぁ。」

 「意外!18だったんですね。私のふたつ上とは思えないです。」
  
 「そうです。大人びてらっしゃいますよねぇ。妹のイゼルベラ姫もとってもお美しくて。」