「雑用は全てこのパピアに言い付けてくれ。」

 「どうぞよろしくお願いします。」

 イーリスが目覚めたのを王子達に知らせ、イーリスのボロボロの衣を綺麗に洗って持ってきてくれた先程の女の子が愛想よく頭を下げる。

 「あ、いえ、とんでもない。こちらこそ…。」



 議論の末、何とイーリスはしばらく王城に滞在することになってしまったのだ。

 話がまとまると王子はてきぱきと指示を出して、豪華な客間を怪我人のイーリスが使いやすいように家具の位置を調整させたり、召し使いをつけたりしてくれた。

 雲の上のように心地よい寝具に身を起こしながらそれを眺めていたイーリスだったが、まだ夢の続きを見ているのだろうか…と今自分の身に起こっていることが信じられない。



 ぎこちなく挨拶を交わす二人を見て王子が言った。

 いや、ぎこちないのはイーリスだけかもしれない。
 
 「僕が言うのもなんだが、パピアを始めとする使用人はこれで日々の糧を得ているんだ。落ち着かないと思うが、それの手助けのつもりで気軽に用を頼んでくれ。」

 「殿下。出立の時刻が迫っております。」