もどかしそうなラコウンの言葉を遮って、フィストスは眉を上げた。
 
 「とにかく殿下も左大臣殿も、心根がとってもお優しい方だ。」
 
 ばつが悪そうに皮肉を言う右大臣だったが、すぐに気を取り直す。

 「とにかく。当の謀反人のプロドシア の息子の許嫁ですぞ。」

 「情報が漏れるというのに、娘を残して自分達だけ逃亡する訳が分かりかりませんな。
 なにかあの娘が情報を握っているなら、捕らえられる前に殺して口を封じておくのが一番の策でしょう。
 そもそも、計画が露見する可能性が高いというのに息子を結婚させるのも謎です。」

 フィストスの言葉にため息をつく右大臣。

 そんな右大臣を見かねて、いつもにも増して髭面を厳しくしかめて彼は続ける。

 「右大臣殿。本当のことをおっしゃって下さい。彼女は、一体何者なのですか?」



 秘密を渋々漏らす右大臣の顔を思い浮かべ、フィストスは鼻で笑った。

 イーリスの冤罪事件を仕組んだのは、このフィストスだったのである。