太陽がすっかり西の山脈の向こうに隠れてしまったころ。

 第一王子ティグリスのお目付け役兼左大臣のフィストスは一人で長い塔の階段を厳しい顔つきで降りていた。

 分厚い絨毯に吸い込まれて鈍くひびく靴音を聞きながら、上でのラコウン右大臣とのやりとりを思い返していた。


 「あの娘が口を割れば、芋づる式に反逆者たちが捕まるのです…勝手なことをされては、困りますなあ!」

 太った赤ら顔をさらに怒りで紅潮させた右大臣の声が、誰もいない塔にこだまする。

 フィストスは動ずることなく答えた。

 「ティグリス殿下のご意向によるものです。それに、今回のことは私も理解しがたい。そのような理不尽な罪に問われているとは知っていたら、私も同じ行動を取っていたでしょう。」

 その優しさで皆から慕われている第一王子の名前を聞いて右大臣はため息をついた。

 「左大臣殿も分かってらっしゃるはずだ、昔から王族はこういうやり方で__。」

 「おや、こういうやり方とは、どういった手法ですかな?」