石の壁にはたくさんの黒く光る鞭や刀が掛けられ、壁際には座面やひじ掛けに異常な数の刺が生えている椅子がどっしりと構えている。

 何か分かったのはここまでで、他にもどう使うのか想像もできない痛々しい鉄の道具がイーリスを押しつぶすように取り囲んでいた。

 ただ、どれも赤黒い汚れがこびりついていて、“どう"使うのか分からなくても“何に"使うのかは理解できる。

 (拷問器具だ……。)

 兵士が中で待っていた男に敬礼をする。

 どうやら楽に死なせてはくれないらしい。

 これから自分が何をされるかを察して冷や汗を流し始めたイーリスを見下ろし、その男が言った。

 「お前の罪状は反乱を企てていたプロドシアとシモノシアの密会を報告しなかったことによる、国家反逆罪だ。これから問う内容について詳しく供述すれば、情状酌量の余地もあることだろう。」

 気が遠くなりそうだった……いや、気絶してしまった方が楽かもしれない。

 「では尋問を始める__。」

 男の声が、黒く冷たい部屋に響いた。


    *    *    * 


 「あーあ、くたびれた。」

 丁寧に書物を閉じ、伸びをする少年。

 「あまり根を詰めすぎないで下さい、殿下。」

 少し顔を曇らせて言う隣のお目付け役に、少年__パルテノ国第一王子ティグリスは微笑んだ。