ギィーと軋みながら錆び付いた格子が閉められ、ガチャン、と軽いようで重い音が暗い地下に響く。

 がちゃがちゃと鎧を鳴らしながら歩く兵士の足音がだんだん遠くなり、やがて消えて行くと、イーリスは気が抜けたように冷たい地面に座り込んだ。

 あの町からここ王都まで、粗末な罪人用の馬車での長い道のりで体は疲れきっていた。

 わずかに通路に灯されたロウソクの明かりがあるだけで、地下牢は暗く寒々しい。

 時々虫や鼠が這うカサカサ…という音が聞こえる以外は静かであった。

 (どうして、こうなったんだろう。)

 何度思い返しても、うしろめたいこと、ましてや国家反逆罪にあたるようなことはしていない。
 
 (夜食を持っていったのは誰ってきいてたけど…それがどう反逆罪に繋がるんだろうか…?クレータ人に夜食を持っていくのが反逆罪?まさかそんな差別的なことを王家がするわけないよね……。)

 こんなことは馬車のなかで何万回も考えた。

 いくら考えを巡らしても、堂々巡りだ。

 (プローティス……。)