彼の青い目にたたえられたギラつく光に、太った男は震えを必死に抑えていた。

 (この目は……海だ。深く、激しい、海原だ。落ちた者を容赦なく大波と渦で飲み込む、恐ろしい海だ……。)

 怯える同僚を見て細髭の男はゴクリと固唾を飲み込む。

 そんな彼らの反応に満足したのか、第二王子はふっと笑みを浮かべて手を離し、円卓を囲む男たちを見回した。

 「で、いつだ?」

 「も、申し訳ありません、葬儀の段取りは大司祭の取り決めでございまして__。」

 細髭の男が空気を変えるべく慌ただしく答えたのを第二王子は遮って言う。

 「違う、即位式だ。さっきも言ったけどな、俺はお前らの傀儡になるのはごめんだからな。言いたいことは分かってるな?」 

 一人一人を舐めるように睨みつけると、彼は長靴でカツカツと傲慢な音を鳴らしながら出ていった。

 重い扉がバタンッと勢いよく閉められ、空気が少し震えた。

 激しい嵐が過ぎ去った心地の男たちは、しばらく何も言うことができなかった。
 
 城外では、黒々とした雨雲を切り裂くように稲妻が閃いていた。