蚊の鳴くような細い声しか出ずイーリスは情けなさと恐怖で歯を鳴らした。
短剣を振りかざされ、思わず目を伏せた時、左から何か光るものが飛んできた。
今度は男が呻き声を上げる番だった。
舌打ちをして腕を押さえながら、男はあっという間に裏路地の闇へ溶けるように消えていった。
長靴で石畳を鳴らしながら一人の男が近付いてくる。
「…大丈夫?」
耳に馴染む聞きやすい声だった。
イーリスは返事をしようとしたが上手く声が出せず、首をがくがく振る。
「あんまり大丈夫じゃないみたいだね。家まで送って行くよ。その方が心強いだろ。」
「…ありがとうございます。」
なんとかお礼を言うと、命の恩人はイーリスを安心させるようにちょっと微笑んだ。
「いいのに。重たいでしょ。」
「これくらいどうってことないよ。職業柄、重い物運ぶのは慣れてるからさ!」
「...本当に、ありがとうございます。」
さっき通り魔に押しやった荷車の酒樽たちは、なんとか無事だった。
イーリスは、隣で重い荷車を押してくれている恩人の顔を改めてそれとなく観察した。
短剣を振りかざされ、思わず目を伏せた時、左から何か光るものが飛んできた。
今度は男が呻き声を上げる番だった。
舌打ちをして腕を押さえながら、男はあっという間に裏路地の闇へ溶けるように消えていった。
長靴で石畳を鳴らしながら一人の男が近付いてくる。
「…大丈夫?」
耳に馴染む聞きやすい声だった。
イーリスは返事をしようとしたが上手く声が出せず、首をがくがく振る。
「あんまり大丈夫じゃないみたいだね。家まで送って行くよ。その方が心強いだろ。」
「…ありがとうございます。」
なんとかお礼を言うと、命の恩人はイーリスを安心させるようにちょっと微笑んだ。
「いいのに。重たいでしょ。」
「これくらいどうってことないよ。職業柄、重い物運ぶのは慣れてるからさ!」
「...本当に、ありがとうございます。」
さっき通り魔に押しやった荷車の酒樽たちは、なんとか無事だった。
イーリスは、隣で重い荷車を押してくれている恩人の顔を改めてそれとなく観察した。


