獅子王とあやめ姫

 ティグリスさまやフィストスさまの命をより良い形で遂行するべく急いでいるのだ。

 彼女のことは相変わらず好きになれない。

 イゼルベラやパピアとは打ち解けているようだが、彼女らと同じくらい顔を合わせているはずの自分が姿を現すと表情を硬くするのが常であった。

 顔の腫れや傷は少しは治ったようだが、彼女の根暗な部分は治っていないだろう。

 暗い廊下とやけに明るい渡り廊下を抜けて塔へ足を踏み入れた。

 急に瞳孔に入る光が減って目が慣れずしばし視界が黒くなったが、構わず階段を一段飛ばしで駆け上がる。

 うっすらとだが絨毯に足跡が複数付いているのを見つけ、あせりが足を速めさせた。

 やっとのことで階段を駆け上がり、そこに横たわっているものが目に入った瞬間、石の手で心臓をぎゅっと掴まれた気がした。


     *   *   *


 「イゼルベラさま~!お探ししましたよ~!」