蛙の子は蛙、と言った。

 もしかしたら。

 この男が知っていたら、父のことを__。

 「何を、言っておるのだ。平民の母娘のことなど、知らん。」

 口調と流れる汗が言っていることと全く釣り合っていなかった。

 母の過去には知らないふりをする必要があるのだろうか。

 町のみんなが知っていた過去よりもっと前のことを、この男は知っているのだろうか。

 でも、と食い下がろうとしたが、ラコウンに全く違うことを被せられ続きは叶わなかった。

 「それにしても良い部屋だな。無駄な装飾はないが質は群を抜いて良い。お前のような娘には身に余って辛いだろう。…そうだ、牢へ入らぬか?あそこの方がそなたは落ち着くであろう。」

 「……!」

 なんて高慢な男。

 こんなに見下されたのは久しぶりだ。

 何とか言い返そうとしたとき、扉が勢いよく開いた。

 「ラコウン。何をしている。」

 少し表情を硬くしながら入ってきたのはティグリスだった。