訪問者が誰か分かったとたん、じわりと手のひらに汗がしみだしてきた。

 (この人が右大臣…。ティグリスさま達と敵対してるんだっけ。そんな人がわざわざ来たってことは__。)

 動揺しているイーリスを尻目にかしこまるパピアをねめつける。

 「王子殿お付きの者はなんとも質素なものだのう。これも殿下らしいと言えばらしいがな。」

 (…でなんて返せばいいんだ?)

 「貴族の私を前に立ち上がることもせんのか。」

 心のなかを読んだかのような右大臣の言葉。

 「…イーリスです。いつもお世話になっております。」

 艶やかなの木の椅子を立ち、頭を下げる。

 馬鹿にしたように鼻を鳴らす右大臣。

 「ラコウンだ。やはり蛙の子は蛙であるな。礼儀のれの字も知らんのか。」

 その言葉に弾かれたように顔が上がった。

 「両親をご存じなのですか?」