こんな早くから誰だろうとパピアと顔を見合わせながら、はいと返事をした。

 返事をするやいなやの間に入ってきたのは知らない男だった。

 脂ぎった肌に口髭を蓄え、大きく出っ張った腹を重そうに抱えて歩いてくる。

 「ほ~お これが王子殿下の“お花”か。随分手厚く護られておるのだな。」

 イーリスの頭から爪先まで、無遠慮に舐めるように眺める。

 偉そう。

 それが初めに抱いた印象だった。

 フィストスも偉そうな類いだが、彼は思慮深さも聡明さも兼ね備えているように思えるがこの男は違う。

 パピアが顔を強張らせ、何かに引っ張られたかのように背筋を伸ばした。

 「う、右大臣様…!」